研究概要 |
ミトコンドリアは、真核生物の生命にとって必須なオルガネラであり、既存のミトコンドリアから複製により生成されるオルガネラであるので、ミトコンドリアの娘細胞へ輸送配置し、相続させることは、細胞増殖にとって不可欠な過程である。生命にとって重要な機構は、進化の間でも多くは保存されることが多いが、ミトコンドリアの娘細胞への輸送機構は、細胞種によって、多様である。ミトコンドリア機能と細胞機能は密接に結びついているので、この多様性が進化において細胞機能の多様化の一因となっていたとも考えられる。出芽酵母においては、ミトコンドリア輸送は、植物などと同じくアクチン系細胞骨格によっており、その際、クラスVミオシンであるMyo2がアクチン細胞骨格系に沿ってミトコンドリアを芽(娘細胞)へと輸送することを見い出した。そして、このMyo2機能には、2つのMyo2のC末ドメインに結合するタンパク質Ypt11とMmr1が必要である。Mmr1は、N末ドメインでミトコンドリアと会合し、C末ドメインでMyo2 C末ドメインと会合するタンパク質で、ミトコンドリアとMyo2をつなぐミトコンドリア上に存在するMyo2受容体を構成していることを明らかとした。また、Ypt11依存的なミトコンドリア輸送とMmr1依存的なミトコンドリア輸送は、独立に働きうることを明らかとし,出芽酵母においては、2系統のMyo2依存的なミトコンドリア輸送経路が働いていることを明らかにした。Mmr1経路は、典型的なモータータンパク質によるオルガネラ輸送モデルにあてはまるが、Ypt11のものは、Mmr1とは、挙動を異にすることから、Ypt11依存経路は、既存のオルガネラ輸送モデルにはあてはまらない新たな輸送機構を示唆するものと考えている。
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