RhoファミリーGTP結合蛋白質に対するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)であるDblファミリー蛋白質は、細胞骨格系の再構成を介して、細胞運動、細胞接着、細胞極性などの種々の細胞機能を調節している。本研究課題では、Dblの近縁分子には、多くのスプライスバリアントが存在することを明らかにし、活性調節に関与すると考えられるドメインの機能を検討した。特に、Dblファミリーに属するDblおよびOstのN末端付近に存在し、これまで機能が未知であったSec14類似ドメインに関して解析を行なった。その結果、Sec14類似ドメインをもつスプライスバリアントともたないスプライスバリアントとでは、その基質となるRhoファミリーGTP結合蛋白質のCdc42と共発現させたとき、HeLa細胞に誘導する細胞形態の変化や細胞内局在部位に差異があることが明らかとなった。 すなわち、Sec14類似ドメインをもたないスプライスバリアントは、細胞膜に局在して、フィロポディアの形成を誘導するのに対して、Sec14類似ドメインをもつスプライスバリアントは、核周辺に局在して、顕著な形態変化を誘導しなかった。また、前者のみが上皮増殖因子刺激に応答して、ラメリポディア形成に関与することが示された。一方、HeLa細胞内において、Cdc42の活性化をin situで検出する新規の方法を開発し、Sec14類似ドメインをもたないDbl(あるいはOst)と細胞膜において共局在しているCdc42が活性化された状態にあるのに対して、Sec14類似ドメインをもつスプライスバリアントと核周辺において共局在しているCdc42は、不活性状態にあることが明らかにされた。以上の結果より、Sec14類似ドメインは、DblやOstの細胞内局在と活性の調節に重要な役割を果たしていると考えられた。
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