Dvlはβ-カテニンの分解を抑制して細胞内に蓄積させ、β-カテニン・TCF複合体を形成させて遺伝子発現を促進して細胞増殖や体軸形成を制御することが知られている。近年、Dvlはβ-カテニンの分解制御以外にもRhoファミリー低分手量G蛋白質を介してRhoキナーゼやJunキナーゼを活性化して平面内細胞極性を制御することが明らかとなった。また、Dvlと結合する蛋白質が複数報告され、生体内ではDvlは多様なシグナルにより活性を制御されると考えられるが、その全貌は明らかになっていない。そこで、本年度は酵母two-hybrid法によりDvlと結合する新規蛋白質Daple同定し、そのWntシグナル伝達経路における作用を解析した。 Dapleは、2009アミノ酸をコードする蛋白質で、ロイシン残基からはじまる7アミノ酸リピート配列に富んでいた。COS細胞にDapleを発現させて免疫沈降したところ、内在性のDvlが共沈した。さらに解析の結果、Dvl中央のPDZ領域とDapleのC末端のアミノ酸配列(GCV)が両者の結合に必要であることが明らかとなった。 Dapleを恒常的に発現するL細胞株では野生型と比べて、Wnt-3a依存性のβ-カテニンの蓄積とTCF転写活性化が抑制された。2-4細胞期のアフリカツメガエル初期胚背側にDapleを導入すると頭部構造が欠失し腹側化が認められた。さらに背側化能を示すDvlと共にDapleのmRNAを初期胚腹側に導入すると、Dvlによる背側化が抑制された。したがって、DapleはWnt依存性のβ-カテニンの蓄積を抑制することにより遺伝子発現や体軸形成を抑制することが明らかとなった。 さらに、本年度は神経細胞の形態形成におけるWntやDvlの作用を解析し、PC12細胞でWnt-3aやDvlがRho、Rhoキナーゼを活性化することによりNCF依存性の神経突起伸張を抑制することを見出した。したがって、本年度の計画をおおむね達成したと考えられる。
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