研究概要 |
腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE)はTNFαのみならず、腫瘍化増殖因子α、Notch、L-セレクチン、βアミロイド前駆体蛋白質やプリオン等の極めて多彩な基質を切断・遊離するセクレターゼであり,ホルボールエステル(PMA)や増殖因子等によって活性化される。我々は最近、ジーンターゲティングにより、ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のδアイソザイム(II型)がTACE活性を厳格に制御していることを初めて明らかにした。本研究はDGKδの刺激による活性化機構や動態変化を解析することにより,未だ殆どブラックボックスであるTACEの活性制御機構を明らかにすることを目的としている。既に我々はDGKδがPMA刺激によってリン酸化され,このリン酸化と本酵素の細胞質から細胞表面膜への移行が密接に関与することを見出している。今回,このリン酸化部位の同定を試み,その一部がプレクストリンホモロジー(PH)ドメイン中のSer22とSer26であることを明らかにした。また,このリン酸化はクラシカル・プロテインキナーゼC(cPKC)によるものであることが強く示唆された。これらのSer残基のどちらか一方をAspに代えると表面膜移行が阻害された。従って,DGKδの表面膜への移行がcPKCにより負に制御されていると考えられる。尚,以上の結果をまとめた論文は現在投降中である。更に,II型DGKの選択的スプライシング産物δ1,δ2とη2はSAMドメインを介してホモあるいはヘテロオリゴマーを形成することを明らかにした(村上ら,J.Biol.Chem.278,34364(2003))。3種のDGK分子の順列組合せがこのオリゴマーに大きな多様性及び多機能性を付与し,TACEの基質多様性に寄与する可能性がある。現在,DGKδ又はDGKηと相互作用するタンパクを酵母two-hybrid法により検索中である。
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