研究概要 |
腫瘍壊死因子(TNF)α変換酵素(TACE)はTNFαのみならず,腫瘍化増殖因子α,βアミロイド前駆体蛋白質やプリオン等の極めて多彩な基質を切断・遊離するセクレターゼであり,ボルボールエステル(PMA)や増殖因子等によって活性化される.我々は最近,ジーンターゲティングにより,ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のδアイソザイム(II型)がTACE活性を厳格に制御していることを初めて明らかにした.本研究はDGKδやその近縁のアイソフォーム(η,κ)の刺激による活性化機構や動態変化を解析することにより,未だ殆どブラックボックスであるTACEの活性制御機構を明らかにすることを目的として計画した. 既に我々はDGKδ1がPMA刺激によってリン酸化されることを見出しているが,今回,このリン酸化部位がプレクストリンホモロジー(PH)ドメイン中のSer22とSer26であることを明らかにした.また,このリン酸化はクラシカル・プロテインキナーゼC(cPKC)によるものであり,DGKδ1の表面膜への移行がcPKCにより負に制御されていることが強く示唆された. DGKη1とη2は浸透圧ショックにより初期エンドソームへ移行し,η1とη2ではソルビトール除去後のエンドソームへの滞在時間が異なることを明らかにした.更に,DGKδ1,δ2とη2はSAMドメインを介してホモあるいはヘテロオリゴマーを形成することを明らかにした.3種のDGK分子の順列組合せがこのオリゴマーに大きな多様性及び多機能性を付与し,TACEの基質多様性に寄与するする可能性がある。 最近,新たなII型アイソフォームとしてDGKκを同定しクローン化し,本酵素は酸化ストレス刺激時にSrcファミリーキナーゼによってチロシンリン酸化されることを示した. 現在,II型DGKと相互作用するタンパクを酵母two-hybrid法により検索中である.
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