研究課題
タンパク質アルギニン脱イミノ化酵素PADI4はHL-60顆粒球や血流顆粒球の核に存在している。細胞をカルシウムイオノフォアA23187で処理すると核タンパク質ヒストンが優先的に脱イミノ化される。本研究はヒストンH2AとH4の脱イミノ化サイトがアルギニンR3と同定した。HL-60顆粒球をA23187で15分間処理、コアヒストンを抽出、HPLCでヒストンH2B、H4、H2AとH3に分離、H4、H2Aを酵素消化、ペプチドをHPLCで分離し、脱イミノ化ペプチドを抗体で検出、TOF-MSで同定した。脱イミノ化サイトはH4N末端Ac-SGRGのR3、H2A N-末端Ac-SGRGのR3であった。H4、H2Aのアルギニン含量は10数%であるので、細胞内脱イミノ化が特異的であることを示した。PADI4の結晶構造はN-末端の免疫グロブリン様サブドメインIとIIとC-末端ドメイン(α/βプロペラ構造)で構成されていた。C-末端ドメインに2分子のCa^<2+>が結合すると、一部の不安定な構造が安定な活性部位クレフト構造へと変化し、初めて基質の結合が可能となる。構造と突然変異の活性相関にもとづき、酵素反応機構を提唱した。MCF-7細胞のpS2プロモータ遺伝子の転写はエストロゲンによって活性化される。この活性化は遺伝子プロモータ領域のヒストンH3のR17のジメチル化が必須である。このジメチル化に拮抗して生ずるPADI4によるH3のアルギニンやモノメチルアルギニンの脱イミノ化がこの生理的条件下に生ずる遺伝子の転写を抑制した。ヒストンの脱イミノ化は、クロマチン転写活性の調節機構に一石を投じた。
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Biochemistry (in press)