牛肺由来のグアニル酸シクラーゼのヌクレオチド結合部位の機能解析 可溶性グアニル酸シクラーゼはGTPからcGMPの産生を触媒するヘテロ2量体のヘム酵素であり、一酸化窒素(NO)の細胞内受容体である。本酵素には2個のヌクレオチド結合部位が存在し、そのうちの1個はヌクレオチドに高親和性を示す触媒部位であり、他の1個は低親和性の活性調節部位であること、ならびに活性調節部位にはヌクレオチド以外に本酵素の特異的活性化剤であるYC-1が結合することは平成16年度報告した。しかしながら、活性調節部位の機能については不明な点が多く残されており、平成17年度の研究によりそれらを明確にした。 BAY41-2272は、最近見出されたYC-1類似の特異的活性化剤であり、本酵素の一酸化炭素(CO)型を著しく活性化する。BAY41-2272の機能について得られた結果を以下にまとめた。(1)BAY41-2272は還元型酵素ならびにNO複合体に1分子結合して、活性化する。(2)dADPならびにGMP-CPPは本酵素に2分子結合するが、BAY41-2272は、それらのヌクレオチドの1分子の結合を阻害する。その結合部位はYC-1結合部位と同一部位であることが明らかにされ、したがってBAY41-2272は活性調節部位に結合するものと結論される。その親和性はYC-1より著しく高い。(3)BAY41-2272がCO型酵素に結合すると、YC-1の場合に見出された複合体と同一な6配位型CO複合体と5配位型CO複合体が生成する。したがって、BAY41-2271がヘムセンサー部位に及ぼす効果はYC-1と同一であると結論される。しかし、5配位型CO複合体の生成量はYC-1に較べて異常に高い。 以上の結果から、低親和性のヌクレオチド部位はYC-1あるいはBAY41-2272が結合する活性調節部位として機能することが明瞭に示された。もし、生体内にYC-1あるいはBAY41-2272と類似の機能を示す物質が存在すると仮定すると、その化合物はヌクレオチド類似の化合物であり、COが情報伝達物質として機能する可能性を強く示唆する。
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