各オルガネラ間の小胞輸送にはそれぞれ特異的なタンパク質複合体が働いている。ゴルジ体→小胞体、及びゴルジ体層板間の輸送にはCOGコンプレックスと呼ばれるヘテロ8量体(COG1-8)の関与と、p115を中心とする長いコイルドコイル構造を有するgolginsと呼ばれる一連のタンパク質群(p115、GM130、giantinなど)の関与について別々に研究が進んでおり、同じ段階に2つの機構が併記されている状況で、2つの関連については不明であった。 本研究はCOGコンプレックスとgolginsの2つの機構の関係を解析することで、ゴルジ体における輸送小胞繋留機構を明らかにすることを目的とし、まず、両コンプレックスの結合について検討した。 ラットゴルジ膜の1%TX-100可溶性画分を抗COG3抗体で免疫沈降するとCOGコンプレックスと共にp115、giantin、GM130(golgins)が共沈した。 また、酵母two-hybrid法により、p115、GM130、giantin(golgins)とCOGコンプレックスの各構成タンパク質の結合について検討したところ、p115とCOG2、GM130とCOG5、giantinとCOG3が直接結合できることがわかった。これらのことから、両コンプレックスはさらに巨大な複合体を形成して、小胞輸送の同一の段階で働いていることが示唆された。 次に、出芽酵母での両コンプレックスの結合を検討した。Usolp(p115出芽酵母ホモログ)とSec35p(COG2出芽酵母オルソログ)の結合をtwo-hybrid法で検討したが、結合しなかった。COG2とSec35Pは一次構造の相同性が低いので他の構成タンパク質と結合するのか、あるいは出芽酵母のゴルジ体は層板構造をもたないことから、両コンプレックスが協調して働くのはゴルジ体層板間輸送だけなのか、検討を続ける。
|