研究概要 |
細胞内小胞輸送は小胞の形成、標的膜への運搬、繋留、融合という段階を経てなされる。 小胞体-ゴルジ体間、ゴルジ体層板間小胞輸送の繋留の段階では、COG複合体と呼ばれる可溶性ヘテロ8量体(COG1〜8)とgolginsと呼ばれる長いコイルドコイル構造を持つタンパク質群のうちp115,GM130,giantinの3つからなる複合体が働いている。COG複合体のコンポーネントCOG2とgolginsのp115が直接結合するという知見を元に、COG複合体とgolginsの相互作用について、さらに解析を進めた。 まず、p115をRNA干渉法でノックダウンした培養細胞のゴルジ体を蛍光抗体法、電子顕微鏡、免疫電顕で観察した。蛍光抗体法では通常ゴルジ体は核近傍にリボン状に見えるが、p115ノックダウン細胞では、ゴルジ体は断片化しており細胞質に小さなドット状に散在して見えた。電子顕微鏡による観察で、断片化したゴルジ体は長さは短くなっているが層板構造を維持していることがわかった。 次に、COG複合体とgolginsの相互作用のゴルジ体の形態維持における役割を検討するため、p115をノックダウンした培養細胞にsiRNA抵抗型のp115 cDNAをマイクロインジェクションしてゴルジ体の形態を観察した。野生型p115を導入した場合は、断片化していたゴルジ体は正常な形態に戻った。一方、COG2結合部位を欠失した変異型p115を導入した細胞では、ゴルジ体の断片は核近傍に集合してはいるもののリボン状にはならず、層板の長さは短いままだった。野生型のp115とCOG2のp115結合部位を同時に導入した細胞でも変異型p115の場合と同じ形態を示すことからもCOG複合体とgolginsの相互作用はゴルジ体の層板の長さを保つために重要であることがわかった。
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