生体内の微量活性因子が糖鎖結合能を有しており、複合糖質の糖鎖が生理活性のモジュレーターとして機能していることが明らかになりつつある。我々はIL-1β、IL-18、TNF-αがGPIアンカー糖鎖を認識していることを見出し、GPIアンカー糖鎖を認識する一群のサイトカインが存在すると考えている。本年度はIL-18及びTNF-αについて新しい知見が得られた。まず、IL-18に関してはヒト胎盤アルカリフォスファターゼをコーティングしたプレートを用いて結合実験を行い、GPIアンカーグリカン部の部分構造を持つハプテン糖を加えて阻害効果を調べた。その結果、マンノース6リン酸及びマンノビオースジリン酸が阻害活性を持つことが判明した。さらに、IFNγを産生するヒトKG-1細胞を用いて上記物質の阻害作用を検討したところ、マンノース6リン酸では阻害が見られる一方でマンノビオースジリン酸を加えると増強効果を示した。したがって、IL-18はGPIアンカー糖鎖存在下でIL-18受容体との高親和性複合体を形成していると考えられた。一方、TNF-αもヒト胎盤アルカリフォスファターゼをコーティングしたプレートに結合し、マンノース6リン酸で阻害されることが判明した。TNF-α刺激によりアポトーシスが誘導されるマクロファージ系細胞株U937にマンノース6リン酸を添加するとアポトーシスが100%阻害されることも明らかになり、IL-18と同様に生理活性発現のモジュレーターとしてGPIアンカー糖鎖が機能していることが示唆された。現在、IL-18及びTNF-αのミュータントを作製し、その糖鎖結合活性と生理活性への影響を検討中である。
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