研究概要 |
基準振動解析計算の結果を収集し、それらを比較することから、タンパク質立体構造の動的性格を明らかにし、その構築原理に迫ることを目的として研究を進めているが、本年度は以下のことを行った。 (1)基準振動解析計算を行い、その結果をデータベースProModeに登録した。対象としたタンパク質は、(1)全原子モデルの基準振動解析にとっては計算負荷の大きい250〜300アミノ酸残基のタンパク質、(2)Catalytic Residue Datasetに登録された酵素(ただし300アミノ酸残基以下)、(3)立体構造分類データベースSCOPの各Foldレベルで、少なくとも1つのタンパク質がProModeに登録されることをめざして選定されたタンパク質。これにより、ProModeへの登録数は昨年度までの約1,200から1,500へと増加した。 (2)ヒト・リゾチームは、系統的にアミノ酸置換が行われ、立体構造が解かれているものが100を越える。そこで、それらすべての基準振動解析を行い、比較することから、リゾチームの立体構造について検討した。特に主成分分析を用いた研究から、アミノ酸置換の動的構造への影響は、置換部位周辺よりも、リゾチームそのものがもつ大域的な動的性格(動的ドメイン構造のゆらぎなど)の変化に直接現れることがわかった。 (3)Catalytic Residue Datasetに登録された酵素について、基準振動解析から定義された動的ドメイン構造と活性部位との関連を調べた。その結果、ドメインとドメインの接触面に活性部位があり、ドメインの運動と密接に関わっていることなどがわかった。 (4)SCOPのSuperFamilyレベルで複数のタンパク質の立体構造アラインメントを行い、基準振動解析から得られる原子位置のゆらぎ、二面角のゆらぎを比較するためのツールを開発した。結果については来年度検討する。
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