細胞周期の進行においてユビキチン・システムによる蛋白質分解制御は重要な役割を担っている。特にSecurinならびに分裂期サイクリンの分解は分裂期の進行に重要である。蛋白質のユビキチン化はユビキチン活性化酵素、ユビキチン転移酵素、ユビキチン・リガーゼの関わる反応であり、複数種存在するユビキチン転移酵素とユビキチン・リガーゼの組み合わせはユビキチン・システムの基質特異性を規定する重要な因子のひとつである。分裂酵母において十数種存在するユビキチン転移酵素の機能解析をおこなった結果、分裂期サイクリンのポリユビキチン化は二つのユビキチン転移酵素UbcP4/Ubc11およびUbcP1/Ubc4が関わる開始反応と伸長反応の2段階反応であることを示唆する結果を得た。また、二つのユビキチン転移酵素は両者ともユビキチン・リガーゼAPC(Anaphase Promoting Complex)とともに機能している可能性を示唆する結果を得た。伸長反応の分子機構を探る目的で伸長反応に関わるユビキチン転移酵素遺伝子ubc4温度感受性変異株を用いて遺伝的相互作用を示す遺伝子の検索を行った。現在、候補の遺伝子を得ることに成功した。この遺伝子について解析中である。また、細胞周期の進行に重要なもう一方のユビキチン経路であるSCF(Skp1-Cullin-F-box)経路に関わるユビキチン転移酵素の候補を得た。候補ユビキチン転移酵素遺伝子破壊株およびubc4変異株においてSCFの標的蛋白質であるRum1の蓄積が見られた。現在、この二つのユビキチン転移酵素の関係を明らかにするとともにSCFの標的蛋白質についてポリユビキチン化の反応機作を解析中である。
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