研究概要 |
インフルエンザウイルスのゲノムは8本のマイナス鎖分節RNAである。ウイルスゲノムの転写と複製は、ウイルス遺伝子にコードされた3種類の蛋白(PB1,Pb2,PA)から形成されたRNA依存RNAポリメラーゼによって行われる。転写の際には、RNAポリメラーゼは宿主細胞の5'キャップ構造をもつRNAを切断してRNA合成のプライマーとして利用するが、複製のRNA合成開始はプライマーなしに行われる。ウイルスRNAポリメラーゼ各サブユニットを発現する組換えバキュロウイルスを作製し昆虫細胞に共感染することで、P蛋白三量体のRNAポリメラーゼの発現精製に成功した。純化RNAポリメラーゼの活性発現様式を解析し、以下の結果を得た。 1)ウイルス粒子由来のRNP複合体中のRNAポリメラーゼ(vRNA結合)のエンドヌクレアーゼ活性に鋳型は必要ないが、組換え体RNAポリメラーゼの機能発現にはウイルスRNAが必要であった。vRNAが酵素活性制御のエフェクターとしての機能を提唱した。 2)vRNAに相補的なcRNAにはエフェクター活性がなかった。vRNA/cRNAの人工的キメラを構築し、エフェクターに必要なRNA構造要素を解析した。 3)組換え体RNAポリメラーゼによるvRNA転写にはプライマーが必要であり、cRNAを鋳型としたRNA合成は非常に弱く複製機能に欠けている。 4)複製機能発現には、宿主蛋白因子が必要であることを示唆し、宿主因子候補を単離した。
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