平成15年度にMybはコリプレッサー群と結合し、その活性を制御していることを明らかにするとともに、C末側の負の制御領域を欠失している細胞がん化活性の高い変異体はコリプレッサーと共存してないこと、また互いに結合してないことを発見した。これらのことはMybによる細胞がん化のメカニズムを理解する上で貴重な成果となった。平成16年度ではこれらの結果をふまえ、生体内で実際にMybとコリプレッサーが相互作用しているのかをショウジョウバエの系を用いて明らかにすることを試みた。その結果、コリプレッサーTIF1βが結合する部位を欠失したMyb変異体を持つ個体にTIF1βを導入したところ、野生型とは異なる表原型を示すことが見い出され、遺伝的相互作用をしていることが証明された。これを前年度の結果と併せてJ.Biol.Chemに筆頭著者として報告した。またMybの活性を正負に制御するシグナル機構を解析していたところHipk2(ホメオドメイン結合タンパクキナーゼ)が結合することを発見した。これによってMybに働くシグナルとして動物の初期発生や形態形成に作用するシグナル分子Wnt-1まで遡って見い出すことができた。すなわちWnt-1がレセプターであるFrizzledに結合するとTAK1、Hipk2、NLKへとシグナルが伝わり最終的にMybがリン酸化される。リン酸化されたMybはさらにユビキチン化されプロテオソームによって分解されることが明らかになった。またがん遺伝子タイプのv-MybはC末のリン酸化部位を欠失しているため分解されにくいため、細胞がん化の1因となっていると考えられた。以上の結果は石井を筆頭著者として、Genes Dev.とJ.Biol.Chem.に発表するに至った。
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