研究概要 |
平成15年度までに、PLG-δ1 PHドメインへの安定同位体標識導入方法の確立、固体NMRによる中性脂質膜上でのPHドメイン立体構造の解析を行った。平成16年度においては、(1)脂質膜の組成変化により誘起されるPHドメインの膜結合状態変化の解析、および(2)脂質二重膜上におけるドメイン間相互作用の解析を目的とした、PHドメインおよび隣接するドメインに関する、^<13>C標識試料調製条件の確立を行った。(1)に関しては、酸性脂質であるPhosphatidylserine (PS)を20%含む脂質膜上において、PHドメインの立体構造が中性膜上で観測される膜結合状態の特徴を失い、水溶液中における構造に近づくことが見いだされた。この立体構造変化は、膜表面の負電荷とPHドメイン間の静電的反発により、中性膜上では脂質膜疎水部との相互作用により構造変化を誘起する両親媒性α2-ヘリックスが脂質膜から離れ、PHドメイン-脂質膜間の非特異的相互作用が失われることを示している。構造変化と同時に観測される酸性膜上におけるPHドメインの運動性の上昇は、PHドメイン-膜負電荷間の反発に一致している。このようなPHドメインの動的構造の脂質膜組成依存性は、脂質マイクロドメイン形成・生体膜脂質組成の非対称性の変化等、生理的な脂質の局所的組成変化に対応するPLC-δ1の構造、および機能の変化に関与している可能性が考えられる。(2)に関しては、PH-EFフラグメント、EF-handドメイン、PLC-δ1全長を対象として、^<13>C標識導入条件およびNMR測定用試料調製条件を確立し、解析の準備を整えた。PHドメインに関して得られた固体NMR測定の方法を基に、今後、EF-hand,および、PLC-δ1中のその他のドメイン(X,Y,C2)とPHドメイン間の相互作用と蛋白質構造への影響を脂質膜上で解析してゆく。
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