PA-PLA_1(Phosphatidic acid - preferring phospholipase A_1)は真核生物に存在するホスファチジン酸に選択性の高いホスホリパーゼA_1である。動物細胞にはPA-PLA_1ファミリーに属する3種のタンパク質、PA-PLA_1、p125、KIAA0725pが存在し、このうちp125とKIAA0725pは申請者らが見出した分子種である。これまでの解析より、p125は小胞体から出芽する輸送小胞COPIIのコートタンパク質と結合し、COPII小胞が出芽するER exit siteに局在すること、またKIAA0725pはCOPIIコートタンパク質とは結合せず、細胞内ではゴルジ体に局在することが示されている。 本年度はファミリーの中で細胞生物学的解析が遅れているPA-PLA_1に関して抗体を作製してその細胞内局在を調べた。蛍光抗体法によりPA-PLA_1はp125及びKIAA0725pとは異なりサイトソルのみに存在し、特定の細胞内膜系には局在しないことがわかった。p125のER exit siteへの局在がどの領域により決定されるのかをp125、KIAA0725p、PA-PLA_1のキメラタンパク質を作製して解析した。その結果、p125に特異的なプロリンに富むN末端側の領域が必須であること、またこの領域とKIAA0725pとのキメラタンパク質はp125と同様にER exit site様の局在を示し、一方PA-PLA_1とのキメラタンパク質はサイトソルに局在することがわかった。これまでのin vitroでの酵素活性の測定ではKIAA0725pとPA-PLA_1は同様な性質を示していた。今回得られた細胞内局在及びキメラタンパク質の解析結果は両者は同様な酵素活性を有しているが、生理的役割が異なる可能性を示唆する。
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