VCPはAAAファミリーに属するATPaseであり、小胞体における異常タンパク質の分解(ERAD)やオルガネラ形成において重要な役割を果たす。VCP結合タンパク質として同定されたSVIPを過剰発現させると、小胞体が肥大化して細胞内に空胞が形成される。本研究では、SVIPによる空胞形成機構を解明し、SVIPの細胞内における役割を明らかにするために、このタンパク質のERADにおける役割を解析した。その結果、in vivoおよびin vitroのアッセイ系において、過剰量のSVIPがERADを阻害することが示され、空胞形成との関連が示唆された。また、SVIP-VCP複合体に含まれる他のサブユニットを同定するために、SVIPの全領域をベイトとして、酵母two-hybrid法スクリーニングを行った。その結果、VCPの他に複数のタンパク質が、SVIP結合タンパク質の候補として同定された。 また、NVL2はVCPとアミノ酸配列がよく類似したタンパク質であるが、VCPが主に細胞質に分布するのに対して、NVL2は核小体に局在する。従って、NVL2は核小体の機能において独自の役割を担っている可能性が考えられた。本研究では、NVL2が核小体においてRNAヘリカーゼの一種と相互作用し、60Sリボソームの生合成に関与することを明らかにした。NVL2のドミナントネガティブ変異体を発現させた細胞において、rRNA前駆体のプロセシングに影響は見られなかったが、このRNAヘリカーゼがリボソーム生合成中間体中に蓄積している可能性が示された。また、種々の変異体を用いてNVL2の核小体局在に必要なアミノ酸配列を同定したところ、この配列にリボソームタンパク質であるL5が結合することが示された。NVL2はL5と結合することにより、核小体に局在化する可能性が考えられた。
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