1.出芽酵母の窒素源飢餓時に見られる擬菌糸様の形態変化では、細胞が一方向へ伸長する特異的な極性成長を示す。過剰発現により、窒素飢餓時の酵母細胞が寒天培地中へもぐり込むのではなく、培地の表層に拡大していく現象を強く誘導する因子Sfg1を見いだした。この因子の発現により非常に大きな擬菌糸コロニーが形成される。この因子のシグナル伝達経路上の位置付けについて検討を行い、Ras2の下流に位置することを明らかにした。 2.過剰発現により、分裂酵母の細胞伸長方向に影響を及ぼす因子を探索した。PB1domainを含む新規因子は、Two-hybrid解析の結果、Scd2のPB1domainと相互作用し、Scd1のそれとは相互作用していなかった。この因子の遺伝子破壊は致死ではなく、また、細胞の極性等にも変化は見られなかった。分裂酵母のMid2欠損変異株では、Old End側からしか細胞が伸長しないが、これにCK2(旧名カゼインキナーゼII)のβサブユニットを過剰に発現させると、New End側からの細胞伸長が誘導されることを見いだした。細胞伸長時の観察から、野生型株に比べ、比較的早い時期から、New End側からの伸長が起こっていることが明らかとなった。CK2の機能は、多岐に渡ると予想されるが、分裂酵母では、まだ詳細な解析が進んでおらず、今回の極性制御に関与するという知見は非常に興味深い。また、この他にも、機能未知因子(SPBC21C3.14c)の過剰発現も、同様の効果をもたらした。
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