研究概要 |
線虫C.elegansの産卵孔である陰門は表皮の再配置による管状構造形成のモデルとして有用である。私たちはC.elegansのプレキシン(Plx-1)変異体を作成し、C.elegansではPLX-1が表皮細胞の配列・移動を制御する重要な因子であること、また、PLX-1のリガンドが膜貫通型セマフォリンSMP-1(Ce-sema-1a),SMP-2(Ce-sema-1b)であることを明らかにしてきた。本研究では陰門形態形成運動制御の分子機構解明を目的として、1)陰門形成におけるセマフォリン/プレキシンの役割、2)陰門形態形成の制御に関与する因子の高効率RNAiによる検索、という2項目からなる研究を実施する。本年度は以下の成果を得た。 1)陰門原基細胞形態の可視化のため、形態マーカーとしてadherens junctionマーカーであるajm-1::gfpを染色体に組み込んだ系統を作成した。また、ced-10::gfp形質転換体を共焦点顕微鏡と3次元画像解析ソフトを組み合わせて、陰門原基細胞全体の形態を可視化することができた。 2)以上のマーカーを用いて、plx-1変異体およびsmp-1変異体陰門原基細胞では、表層近くだけでなく3次元的にも配列が乱れていることを明らかにした。一方、膜貫通型セマフォリンsmp-2(Ce-Sema-1b)変異体では陰門原基細胞の形成過程の配列異常は見られなかった。 3)セマフォリンシグナルがプレキシンにいつ・どこで受容されるのかを調べるため、smp-1,smp-2遺伝子を単離し、ほぼ遺伝子全長をふくむgfp translational fusionを作成した。smp-1::gfpはplx-1::gfpと同様に、陰門発生の全段階で原基細胞にGFP発現が見られたが、smp-2::gfpは陰門発生後期に一部の細胞で発現が見られただけだった。
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