研究概要 |
筆者は、転写因子Ad4BP/SF-1の、ラット胚発生過程における発現解析によって、副腎皮質と生殖腺の両原基が由来する共通原基を見出した。又、この共通原基から副腎皮質原基、生殖腺原基への分化過程には始原生殖細胞との関連から4つのステップが存在することを明らかにした。本研究は、この共通原基の分化過程を制御する因子と、その組織形成の分子機構を明らかにすることを目的とし、共通原基の分化の前後において発現動態が変化する因子の発現および機能解析を行う。脂肪細胞の分化抑制因子として同定されたPref-1は共通原基の分化前は広く共通原基に発現しているが、分化につれて副腎皮質領域においてのみ、その発現の継続が認められた。一方、生殖腺領域の形成に必須の転写因子WT1は共通原基の分化前後を通じて、生殖腺領域においてのみ発現が認められた。Pref-1遺伝子上流の解析によって、Pref-1遺伝子のプロモーター領域にWT1の結合部位が存在すること、およびWT1によってPref-1遺伝子の発現が抑制されることを示唆する結果をin vitroの系において得たが、in vivoである生体の胚において、実際にこの抑制系が機能して副腎皮質、生殖腺の形成に関与しているかどうかは、依然として未知のままである。現在、これを明らかにするために、胎児の全胚培養系を確立し、外来的にWT1,Pref-1,Emx2のsiRNAを導入して、副腎皮質、生殖腺の形成にこれら遺伝子の発現抑制が及ぼす影響を検討中である。又、成体の副腎皮質においてPref-1は球状層に特異的に発現しているが、IZA (inner zone antigen)の発現がPref-1の発現とちょうど相補的であること、IZAがprogesteroneの受容体であること、IZAの過剰発現系においてprogesteroneの21-水酸化が活性化されることが明らかになった。
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