研究概要 |
神経管は脊索動物を特徴づける器官であり,高度な中枢神経系を構成するだけでなく,中軸構造としても重要である。これまでの結果から,ホヤ胚で見つかった神経管特異的CiNut1遺伝子が神経管の形態形成運動に重要であることが示唆された。ホヤ胚における神経管形成の分子メカニズムを探る目的で,CiNut1遺伝子に関して以下の2点を中心に解析を行った。 1,CiNut1遺伝子の機能解析 CiNut1遺伝子のRNAiを行ったところ,モロフォリノオリゴで得た結果と異なり,神経管細胞の細胞接着が弱まっているような表現形を示した。それらの胚でも,表皮や脊索などの他の組織はほぼ正常に分化していた。これは,CiNut1遺伝子の神経管形成における重要性を示唆するが,モロフォリノでの結果との違いはうまく説明できない。さらに,さまざまなミュータント・フォームのCiNut1遺伝子を神経管や胚全体,脊索などで発現させてみたが,明確な表現形の違いを得ることは出来なかった。これは,下記のCiNut2遺伝子のためかも知れないが,詳細な検討が必要である。 2,CiNut1遺伝子パラログのCiNut2遺伝子 カタユウレイボヤ・ゲノムプロジェクトの完成をうけ,CiNut1遺伝子に類似する遺伝子をホヤゲノム中で検索したところ,新たにCiNut1遺伝子に隣接してCiNut2遺伝子がみつかった。CiNut2は,CiNutとアミノ酸配列で63%の相同性を示し,シグナル伝達に重要な細胞内ドメインで高い相同性を示していた。CiNut2遺伝子は,CiNut1遺伝子と同様に神経索および脳で発現していた。今後,CiNut遺伝子の機能解析にあたって,両遺伝子の機能破壊を行う必要を示唆している。
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