研究概要 |
神経管は脊椎動物を特徴づける器官であり、高度な中枢神経系を構成するだけでなく、中軸構造としても重要である。これまでの研究でホヤ胚神経管形成過程が、脊椎動物のそれと同様なものかどうかといった基本的な疑間が浮かぴ上がってきた。そこで、細胞接着分子として脊椎動物等における神経管形成過程で重要なカドヘリン遺伝子のカタユウレイボヤでの見直しと、ホヤ胚神経管形成過程における細胞運動の詳細な見直しを行った。 1,カタユウレイボヤにおけるカドヘリン遺伝子の見直し 昨年度、カタユウレイボヤのカドヘリン遣伝子の1つCiCadII遺伝子が神経管特異的に胚性の発現を示すことを明らかにした。ゲノムプロジェクトで明らかにされた19個のカドヘリン関連遣伝子を再度見直し、カタユウレイボヤでクラッシック・カドヘリンは2個しかないこと(タイプIのCiCadI遺伝子とタィプIIのCiCadII遺怯子)を明確にした。CiCadI遺伝子は母性mRNAとしても存在し、のう胚期以降、胚性の発現を示す。しかし、その発現場所は神経管でも表皮でもないようである。 2,細胞運動の詳細な見直し 脊椎動物の神経管形成で、神経外胚葉から形成する一次神経管形成と間充識から形成される二次神経管形成という違いのあるこが知られている。今回、神経管特異的遺伝子のプロモーターでレポーターをドライブして神経管細胞を標識し、ファロイジン染色を行うことで、神経管形成過程の細胞移動と細胞運動を詳細に記載した。その結果、大きな細胞移動を伴わない脳胞と後方への細胞移動を示す神経索のちがい、さらに、脳幹部分の細胞表面にアクチン繊維が濃いことがわかり、細胞の並び換えなど大きな形態形成運動を行っていることも示唆された。
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