今年度は、当初の申請書に書いた計画をすべて実現した。その概略は以下のとおりである。 1.cDNAマイクロアレイ解析で同定した100以上のレチノイン酸標的遺伝子候補の(正常胚とレチノイン酸処理胚における)発現パターンを詳細に記載し、web (http://www.kochi-u.ac.jp/~tatataa/RA/RA-targets.html)で公開するとともに、論文として発表した。 2.オリゴチップ解析(北大・安住薫博士と共同)を行い、cDNAマイクロアレイの結果の再現性を確認した。オリゴチップは、私たちのcDNAチップの2倍以上の遺伝子をカバーしているので、さらに多数の標的遺伝子を発見できた。現在、レチノイン酸処理+翻訳阻害剤処理を施した胚のRNAを用いて、このオリゴチップからレチノイン酸に"直接"応答する遺伝子を絞り込む実験を実施中である。 3.レチノイン酸合成酵素(Raldh)、分解酵素(Cyp26)、受容体(RARとRXR)、また、レチノイン酸による形態形成制御に関与するさまざまな因子(Hox、Cdx、Meis、FGF、FGFRなど)のcDNAを同定し、正常胚とレチノイン酸処理胚における発現を調べた。 4.Cyp26、RAR、cdx、Hox1の上流配列をゲノムDNAより単離し、lacZレポーター遺伝子を作製した。これをホヤ胚に導入し、正常胚やレチノイン酸処理胚におけるレポーター遺伝子の発現を観察した。現在、それぞれの調節領域について多数のdeletionや点変異を作って、組織特異的エンハンサーエレメントの同定やレチノイン酸応答エレメントの同定を試みている。これは現在進行中であり、来年度には完成させて論文として発表したい。 5.RARのエンハンサーを利用してcdxを異所的に発現させるプラスミドを作製した。この異所的発現の結果解析は来年度の課題とする。
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