研究概要 |
動物の性決定において,XX/XY型とZZ/ZW型の分子機構を比較解析することは、種の分化と進化を考察する上で重要であるが,ZZ/ZW型の性決定の分子機構は今だ未解明である。我々は,15,16年度の本研究課題において,遺伝学的にZZ/ZW型の性決定様式を持つアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の雌ゲノム特異的(すなわちW染色体にリンク)遺伝子xDM-Wを単離・解析を行い,xDM-Wは、精巣形成(雄決定)に関わると予想されるxDmrt1とDNA結合領域で相同性が高いこと及び発現解析等から,その転写産物が卵巣形成を導くというモデルを考案した。本年度は昨年度に引き続き,この作業仮説を検証するために解析を行い,以下の結果を得た。 1,xDM-WとxDmrt1は,共通のDNAシスエレメントに特異的に結合した。更にこの配列の下流にルシフェラーゼレポーターを連結し,培養細胞系で調べたところ,xDmrt1は転写活性化能を持つのに対し,xDM-Wは転写活性化能を欠いている可能性が示唆された。 2,xDM-Wプロモーターを含むと考えられる5‘上流域の下流にxDM-W cDNAを連結しトランスジェニック個体の作製を行ったところ,精巣形成の異常が認められる個体が遺伝的ZZ型に少ないものの観察された。 3,DM-W遺伝子の進化的保存性をサザンブロット解析及びDMファミリー遺伝子の単離等で検討したところ,近縁種であるSilurana (Xenopus) tropicalisには,DM-Wは存在しない可能性が強く示唆された。 以上より,xDM-Wは,Xenopus laevisの性決定おいて,精巣形成を阻害することによって卵巣を導く性決定遺伝子である可能性が示唆された。また,近縁種tropicalisではこの分子機構による性決定は行われず,種の分化と性決定は密接な関係にあると考えられる。
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