研究課題
基盤研究(C)
溝牙科(コブラ、ウミヘビ)に属する毒ヘビの遺伝子中には、毒腺で発現している毒PLA2(IA型)遺伝子と生物が普遍的に消化酵素として持っている膵臓PLA2(IB型)の遺伝子が共存するはずである。従って、溝牙科毒ヘビのPLA2遺伝子には、共通の祖先遺伝子から酵素遺伝子としての機能を捨て、或いは保ちつつ、毒PLA2(IA型)遺伝子として進化したもの、膵臓PLA2(IB型)遺伝子として進化を遂げてきたもの、さらに、炎症部で発現する非膵臓型PLA2(II型)として進化してきたもの等が存在すると考えられる。本研究では、エラブウミヘビを材料とし、毒ヘビ体内で発現している種々のPLA2遺伝子を明らかにすることにより、毒PLA2をコードする遺伝子の進化過程を明らかにすることを目的とした。平成15年度は、毒腺・膵臓・肺のmRNAからRT-PCRによりIB型(膵臓タイプ)ならびにIA型(毒タイプ)PLA2の増幅を行い、心臓・膵臓・脳・肺・筋肉からIA型、心臓・膵臓・毒腺・脳・肺・筋肉からIB型を得た。IB型の推定アミノ酸配列には、哺乳類膵臓のIB型PLA2に存在する、プロ配列が無かった。L.semifasciata膵臓由来IB type PLA2遺伝子をprobeとし、様々な組織(心臓・膵臓・毒腺・肝臓・脾臓・肺・筋肉)から抽出したRNAを用いてNorthern blottingを行った。しかしながら、毒腺以外の組織ではprobeと反応するbandは認められず、その発現量がかなり低いことが示唆された。以上の結果から、L.semifasciataの各組織では、非常に微量ではあるが、IA型IB型PLA2遺伝子が発現していることが明らかになった。平成16年度は、エラブウミヘビ属のL.colubrine, L.laticaudata及び、II型PLA2を持つハブ、毒を持たない、アオダイショウ、シマヘビの膵臓を材料とし、IB型PLA2の検索を行った。いずれのヘビにおいても、IB型PLA2をRT-PCRにより増幅することが出来た。増幅されたcDNAはいずれも約900bpで、L.semifasciataで存在が示唆された3'のノンコーディング領域の短いものは取れなかった。
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Gene 332
ページ: 179-190
Gene 313
ページ: 111-118