今年度は専らこれまでに蛋白分析用に30年間で収集してきた血液サンプルからkitを用いてDNA抽出を行った。ヒヒについては1975年から1984年にエチオピアで集めたマントヒヒ、アヌビスヒヒ、それらの自然雑種個体合計300頭分、1979年から1995年に収集した南北エチオピア高原のゲラダヒヒ5地域から350頭、のDNAを抽出。さらに1997年から収集してきているサウジアラビアのマントヒヒの血液200頭分のDNAを抽出した。これらの一部を用いてミトコンドリアDNAのD-loopの上流域340の塩基配列を決定したところサウジアラビアでは15のハプロタイプが検出されエチオピアの純粋マントヒヒからは10のハプロタイプが見いだされた。しかしこれらのハプロタイプははっきり区別されるものではなく互いに入れこになり系統関係は複雑な様相を示した。またサウジアラビアのハプロタイプにはアヌビスのハプロタイプに酷似のものが存在しより複雑な系統関係を提示している。来年度はエチオピア内部のアヌビスヒヒあるいは雑種ヒヒのハプロタイプを検索しサウジアラビアのマントヒヒの系統関係を明確ににしてゆくつもりである。さらにスリランカのトクモンキー20地域からの150頭分のDNAを調整し、ミトコンドリアDNAを標識にして集団関係を明らかにしつつある。ニホンザルについては屋久島、幸島、淡路島、勝山、椿、日光、波勝をDNAを調整しマイクロサテライトを標識にして解析を行いヤクシマザルが必ずしも遺伝的変異性が低く無いという興味ある結果を得ている。
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