研究概要 |
本研究は,増幅DNA断片長多型(AFLP)分析を霊長類の遺伝的多様性の評価に導入するため,1)家系の明らかなマカカ属サルを用いてAFLP多様度の階層的比較を行い基礎的情報とし,2)応用として,染色体転座変異を持つアジルテナガザルとチャイロキツネザルの亜種間雑種でAFLP分析を行うことが計画されている.本年度は,各項目で分析に供される試料の収集とそれぞれの試料についてAFLP分析を行う前に必要な遺伝的情報を得るための実験を行った.さらに一部の試料についてはAFLP分析を開始した. 1.当霊長類研究所で閉鎖集団として維持されるマカクザルコロニーのサルから,定期検診を利用して血液試料を得,DNA試料化をすすめた.さらに,当研究所の人類進化モデル研究センターに保有される記録をもとに,ニホンザル嵐山群を対象に母系の家系図を作成した.また,AFLP分析の実験条件確立にむけた予備実験を開始し,6種類の選択プライマーの組み合わせでニホンザルのDNA試料を分析した. 2.(1)本研究代表者が分担者として参加している研究において,平成15年9月にスマトラとカリマンタンでペットのアジルテナガザルから試料採集を行った.本年度は,これらの試料でミトコンドリアDNAおよびY染色体遺伝子の塩基配列の分析を行い,形態分類による種・亜種判定の結果を確かめた.染色体転座変異の有無のデータと併せて,AFLP分析のための試料を分類した. (2)2001年に採集したマダガスカル国ベレンティ保護区のチャイロキツネザル雑種集団のAFLP分析を続行している.また,平成15年6-7月の調査で採集したベレンティ雑種集団および非雑種チャイロキツネザル亜種Eulemur fulvus collarisの試料のDNA化を行っている.さらに,平成16年2-3月にかけて,もう一方の非雑種亜種E.f.rufusの捕獲・試料採集を行った.
|