研究概要 |
本研究は,増幅DNA断片長多型(AFLP)分析を霊長類の遺伝的多様性の評価に導入するため,次の2項目の研究を実施する.1)霊長類研究所の家系の明らかなマカカ属サルを用いてAFLP多様度の階層的比較を行い基礎的情報とする.2)染色体転座変異を持つアジルテナガザルと染色体数のことなるチャイロキツネザルの亜種間雑種でAFLP分析を応用する. 本年度は,各項目について,以下のように行った. 1.当霊長類研究所で閉鎖集団として維持されるニホンザルコロニー嵐山群を対象に,マイクロサテライトDNAの多型分析を開始し,コロニー内の個体間の遺伝的関係の解明をすすめるとともにAFLP分析の実験をすすめた.個体ごとのAFLPプロファィルデータを蓄積中である.また,定期検診を利用して血液試料を採集し,DNA試料化をすすめた. 2.(1)アジルテナガザルおよび染色体変異のないミューラーテナガザルについて,AFLP分析のための試料を分類する目的で,ミトコンドリアDNAおよびY染色体遺伝子の塩基配列の分析を行った結果を第20回国際霊長類学会(イタリア・トリノ市)で発表した.また,研究協力者と共同して,マイクロサテライトDNA分析を行い,スマトラのアジルテナガザル集団の遺伝的構成がミトコンドリアDNAおよびY染色体遺伝子からみた分子分類と矛盾のないことを確かめた.AFLP実験をすすめた. (2)平成16年2-3月の調査で採集した非雑種亜種E.f.rufusの試料から、DNA抽出を行い,AFLP分析に使用するためのDNA試料の精製・濃縮を行った.
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