研究概要 |
64名の高齢者を対象とした生体リズムおよび心身機能の測定および評価結果について,閉じこもりの有無および独居,非独居という観点から検討した. 1)閉じこもりの有無という観点から:生体リズム異出現頻度は閉じこもり高齢者(18名)が非閉じこもり高齢者(46名)に比較して有意に高く,リズム異常のタイプは行動量減少型と昼夜境界消失型が認められた.非閉じこもり高齢者にも昼夜境界消失型と行動量減少型が認められた.閉じこもり高齢者は非閉じこもり高齢者に比較して行動量と光曝露量が少なく,行動量と外出頻度の減少がリズム異常の出現率を高めていると考えられた.簡易生活リズム質問票を用いた生活リズム同調と面接調査による聞き取りからも,生活リズム同調得点は閉じこもり高齢者が非閉じこもり高齢者に比較して有意に低く,特に社会的同調が低下していた.日常生活自立度については閉じこもり高齢者と非閉じこもり高齢者に大きな違いは認められず,生活満足度や趣味の有無についても同様であった. 2)独居,非独居という観点から:生体リズム異常出現頻度は独居高齢者(42名)が非独居高齢者(22名)に比較して有意に高く,リズム異常のタイプは行動量減少型と昼夜境界消失型が認められた.独居高齢者は日常生活活動や家事等の活動を一人で行っているにも関わらず非独居高齢者に比較して行動量と光曝露量が有意に少なく,その行動範囲が自宅および自宅周辺に限られていることが伺われた.簡易生活リズム質間票の結果は非独居高齢者に比較して有意に低く,特に社会的同調が低下していた.日常生活自立度については独居高齢者と非独居高齢者に大きな違いは認められず,生活満足度や趣味の有無についても同様であった. 以上の結果より,閉じこもりと独居は高齢者の生体リズム異常に影響するが,心身機能が維持されている高齢者の生活の質は低下しないことが示唆された.
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