研究概要 |
1.イネのモチ、ウルチの遺伝子解析で、培養細胞において体細胞相同染色体組換えが認められたことから、DNA相同組換え遺伝子の関与が推察された。そこで、イネの減数分裂期特異的相同組換え遺伝子RiLIM15の培養細胞内での発現を中心に解析をおこなった。 2.日本型イネのBAC libraryより同遺伝子の単離を試みたところ、2種類のRilILM15遺伝子RiLIM15A,RiLIM15Bを単離することができた。これら遺伝子の塩基配列を比較したところ、これらの間でコード領域内のエクソン領域では相同性が極めて高いが(95.3%)、イントロン領域では相同性が比較的低い(76.1%)ことが明らかとなった。一方、両遺伝子の推定アミノ酸配列を比較した結果、それらの相同性は極めて高く(98.2%)、両遺伝子は機能的に類似していることが示唆された。したがって、RILIM15は機能的に類似した多重遺伝子族であることが明らかになった。 3.これまで、イネRiLIM15遺伝子が体細胞分裂期相同組換えのために,減数分裂期幼穂だけでなく体細胞培養細胞でも特異的に発現することを明らかにしてきたが、同遺伝子の発現は、mRNA in situ hybridization法でも確認された。またRiLIM15の転写産物であるmRNAのcDNAを調べたところ、alternative splicingによると考えられる長さの異なる8種類のcDNAが発見された。これらのことよりRiLIM15タンパクのアミノ酸配列に、フレームシフトによるアミノ酸残基の置換が生じ、それぞれ異なる機能を有しているものと推定された。 4.バーズフット・トレフォイルとアルファルファの属間体細胞融合カルスにおいて、全DNAをBamHIで処理し、pRR217をプローブとしたサザンブロット分析の結果、バーズフット・トレフォイルの9本のバンドのうち1本のバンドが欠失し、その部分に9本のアルファルファのうちの1本のバンドが挿入されていた。これは異種間の体細胞染色体組換えによると考えられる。遠縁間でも染色体に相同部分があれば組換えを起こすことを示唆し、育種上重要な手段となりうることを示している。
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