研究概要 |
栽培オオムギは,脱穀時に頴と種子が分離できない"皮性"(皮ムギ)と容易に分離できる"裸性"(裸ムギ)とに大別される.皮性と裸性の分化は栽培オオムギに特有で,他の麦類の栽培種はすべて裸性である.皮ムギは醸造・飼料用に使われるのに対し,種子が頴から分離できる裸ムギは食用に適し東アジアに偏って分布する.皮ムギの頴は種子を外界の環境ストレスから保護する役目も果たしている.したがって,皮裸性は農学的にも重要な形質であるだけでなく,オオムギの栽培化や伝播の過程を解明する上でも鍵となる形質である. 皮性と裸性という形態の顕著な違いは単一の主働遺伝子によって支配され、皮性が裸性に対して優性である.皮裸性を支配する遺伝子は7H染色体長腕に位置することは知られているが,遺伝子単離の試みはなされていない.皮裸性の違いは登熟期に子房壁からの糊状物質の分泌の有無によって決まるとされるが,詳しいメカニズムは不明である. 今年度は皮裸性を支配する遺伝子の単離に向け,AFLP法とバルク法を併用し密接に連鎖する分子マーカーをスクリーニングし,それらを扱いの容易なSCARマーカーに変換することを試みた.1,894種類のプライマー組合せについてAFLPによるバルク分析を行ったところ,12個の連鎖バンドが得られた.そのうちの5個についてはSCARマーカーに変換することができた.コビンカタギ(裸性)とTriumph(皮性)の交雑に由来する151個体からなるF2集団を用いてマッピングを行った.裸性遺伝子は2つのマーカーの間に0.3cMおよび1.2cMの距離を置いてマッピングされた.
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