研究概要 |
オオムギの重要形質である,種子の皮裸性を決定する遺伝子を単離し,その機能を解明することを目的として研究を進めている.本年度は裸性遺伝子(nud)座を岡山大学で開発されたESTマーカーを用いてマッピングし,2つのオオムギEST間に位置づけた.次に,nudを挟み込むオオムギESTに高い相同性を示すイネESTを検索したところ,イネ第6染色体長腕に該当するESTが見つかり,その間の距離は約370kbであった.この区間のイネゲノム配列情報を元にマーカー開発を進めた結果,オオムギnud座に対応するイネ第6染色体上の領域を約80kbに絞り込むことができた.この領域のイネゲノム配列を利用して,新たなオオムギマーカーを開発し,候補領域を絞り込むことを続けた結果,nud座の候補とみられる遺伝子を同定した.興味深いことに,このオーソログとみられる遺伝子がイネにも存在することが明らかになった.イネではオオムギのような皮性・裸性の分化はみられず,全て裸性であることから,このイネの推定オーソログはイネでは異なる機能を持つと考えられる. イネとのシンテニーを利用した解析と並行して,nud座に密接に連鎖するマーカーをプローブとしてはるな二条BACライブラリーをスクリーニングし,nud座をカバーする物理地図の作成を開始した.現在までに約400kbからなるコンティグが構築され,遺伝地図との対応関係も明らかにすることにできた.現在時点で,コンティグ上でのnud座の末端側の境界は決定できたが,動原体側での多型マーカーで組換え体が得られておらず,こちら側の境界は未定である.
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