研究概要 |
目的 ヘテロシスを利用したF1品種の育成は中国におけるイネ収量の飛躍的向上に大きな貢献を果たしているが、その機構はほとんど研究されていない.本研究では,広親和遺伝子を利用して雑種不稔の発現しないイネの遠縁雑種を材料に、その高いヘテロシスを研究対象とする。それらの後代系統(B1F2)ごとに、ヘテロシス発現に関与する諸形質、とくに葉緑体含量、葉の老化、低温耐性などを調査する。 結果 インド型と日本型の雑種にインド型または日本型を戻し交雑した2集団、すなわちIR36/熱研2号//IR36およびIR36/熱研2号//熱研2号について、それぞれB1F1の120〜130個体のマイクロサテライト標識遺伝子について調査し、染色体地図を作成した。これらの個体群の後代B1F2系統を用いて、幼苗時の生育および温度反応を調査し、量的遺伝子座を探索した。また、生育調査のあと、出穂後は、温度を一定にした人工気象室に搬入して、成熟期の葉緑素含量、生葉数などを調査した。 現在までに、調査した形質について、それぞれ、2〜3箇所の有意なQTLを見出している。各QTLについて、AA, Aaおよびaaの遺伝子型の形質の値を比較し、ほとんどは不完全優性型の量的遺伝を示すことが判明した。現在は、得られた個々のQTLについて、正負の方向で後代個体群を選抜して、その確認を進め、高ヘテロシスの原因である遺伝子座の確実なリストを得る見込みである。
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