研究概要 |
キャベツとシロイヌナズナとの体細胞雑種を作出し,そのゲノム構造を明らかにするとともに,シロイヌナズナのゲノムをキャベツに導入しようとした。すでに得られているシロイヌナズナとキャベツ品種‘富士早生'との雑種に加えて、キャベツ品種‘中生サクセッション'との間にも雑種を獲得して、その特性を解析した。 シロイヌナズナの系統‘Columbia'とキャベツ品種‘中生サクセッション'からプロトプラストを単離し、融合処理を施した後培養に供した。その結果127個のカルスが得られ、そのカルスのうち33個がシュートを生じた。再分化シュートの多くは培地上で枯死したり、シロイヌナズナと同様に抽苔・開花に至ったが、6個のシュートが栄養生長を継続した。これらのうち3個のシュートからDNAを単離し、ゲノム構造の解析を行った。 3個のうち2つのシュートは核ゲノム中のTpi遺伝子についてキャベツと同一のパターンを示すとともに、葉緑体ゲノムにおいてもキャベツと同一であった。これに対してミトコンドリアゲノムにおいては、atp5遺伝子の領域などで両親種のパターンを合わせ持つことが認められた。このことはこれらのシュートがミトコンドリアゲノムに関して雑種性を有するサイブリッドであることを示している。一方、他の再分化シュートは核ゲノムとミトコンドリアの遺伝子について雑種性を示すと同時に、葉緑体に関してはキャベツのゲノムを受けついでいた。このため、このシュートは雑種の核ゲノムとミトコンドリアゲノムを持ち、これらとキャベツの葉緑体ゲノムを組合せた体細胞雑種であると考えられた。 このようにゲノム構造の異なる2つのタイプの雑種がキャベツとシロイヌナズナとの間で得られた。これらと先に獲得しているキャベツ品種‘富士早生'とシロイヌナズナの雑種を含めて、雑種のゲノム構造と植物体の特性との関係を更に解析する必要がある。
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