研究概要 |
我が国の新・生物多様性国家戦略では,二次草原をその重要な要素に挙げている。また、二次草原は特有の景観を持ち自然公園の重要な景観構成要素となっている。他にも、二次草原には文化的価値など多面的な価値があると言われている。対象地である八ヶ岳中信高原国定公園霧ケ峰地区においても,2,300haものまとまった二次草原が残っており、生物多様性保全上重要な地域であると共に、ニッコウキスゲをはじめ地域の景観としても高い価値を有している。 一方で、二次草原は採草や火入れなどを行うことで維持されて来たが,第二次世界大戦後の採草利用の減少に伴う森林化の傾向は各地で報告されている。この様な中、二次草原の多面的価値は衰微する傾向にあり、周辺住民や来訪者を含む多様な主体が関わることができる二次草原保全システムの構築が必要である。 そこで本研究では,霧ヶ峰地区を対象に,採草利用期における二次草原の維持管理システムの成立と変容を明らかにし、二次草原減少の空間的パターンから将来の樹林化の予測を行うと共に、現代的価値観とその相互関係を明らかにし、特に来訪者の価値観に注目して二次草原の評価を行い、今後の二次草原保全システム構築方法を考察するものであり、本研究の独創性はここにある。 まず、二次草原の植生とその景観は現在までに衰退しており、これを維持するためには火入れや大規模な雑木の処理が必要であることが明らかになった。 また、来訪者の理解と協力を得るには、生態的価値を中心とした幅広い価値観に見合う保全手法を用いることが評価を高める前提条件となり、そのような管理の結果として草花が多く広々とした空間を維持することが重要であることが明らかになった。採草時代の管理システムは景観と植生保全の機能を果たしてきており、現代のシステムを構築する上でもこのシステムを次善の策として多考にすべきであることが明らかになった。
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