研究概要 |
以下の項目について検討した. 1.数種の果樹の新根の太さと一次木部維管束数との関係 一次木部維管束数はウンシュウミカン4〜6個,ナシ3〜7個,ブドウ3〜6個,ビワ4〜8個,ザクロ5〜7個,ヤマモモ3〜7個であり,イチジクとイチョウは2個であった.新根の太さと根の一次木部維管束数との関係はナシとブドウでは高い正の相関がみられた. 2.モモ実生樹の新根の太さと一次木部分化との関係 モモの根の維管束数は3〜7個の間で変異した.窒素施肥量と関係なく,太い根ほど一次木部数は明らかに多かった.窒素施肥量の多い樹ほど新根の発生数とともに太い根が多く発達するため,窒素施肥量の増大に従って一次木部数の多い根が増加するものと考えられる. 3.バラ科果樹の根齢に伴う細胞構造の変化 内皮側の皮層細胞に見られる細胞壁の肥厚部分はフロログリシン反応で強く赤色に染色した.根の横断面で見るとビワで最も顕著であり,ついでリンゴとナシとなり,モモで劣った.さらにビワについて根の齢による皮層細胞の細胞壁の肥厚状況をカスパリー線の発達と比較しながら検討した. 4.土壌乾燥処理がビワ樹の根の細胞構造に及ぼす影響 ビワ樹では内皮側の皮層細胞の細胞壁が土壌乾燥によって著しく発達することを確認した. 5.バラ科以外の果樹根の内部構造 バラ科の果樹類の根には皮層細胞の細胞壁が肥厚する特徴的な構造が発達する.バラ科以外の果樹根についてその内部構造を詳細に検討し,特にカスパリー線の発達を観察した. 6.窒素施肥量の相違がザクロの成長に及ぼす影響 ザクロは土壌乾燥に強い耐性をもつことが知られており,その原因を解析することは興味深い.また,ザクロの塩類耐性についての実験もみられないようである.今回は,窒素施肥量を変化させて検討し,体内栄養ならびに根の細胞構造について検討中である.
|