植物ウイルスの移行蛋白質(MP)が宿主遺伝子の発現を制御する可能性があるかどうかを調べるために、トマトモザイクウイルス(ToMV)のMPに結合する推定上の転写活性化共因子(タバコ由来のMultiprotein bridging factor 1ホモログ[NtMBF1])を利用した解析系の構築した。(1)レポーターとして、エチレン応答性配列(ERE)をプロモーター領域にもち、大腸菌由来のβグルクロニダーゼ(GUS)を発現するプラスミド、(2)第1のエフェクターとして、エチレン応答性配列を認識するタバコ由来の転写活性化因子(NtERF2)をカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターにより発現する転写活性化因子発現用プラスミド、(3)第2のエフェクターとして、タバコ由来NtMBF1をCaMV 35Sプロモーターにより発現する転写活性化共因子発現用プラスミド、(4)第3のエフェクターとして、ToMV MPをCaMV 35Sプロモーターにより発現するMP発現用プラスミド、(5)インターナルコントロールとして緑色蛍光蛋白質(GFP)をCaMV 35Sプロモーターにより発現するプラスミド、(6)レポーターの定常的発現のコントロールとして、CaMV 35SプロモーターによりGUSを発現するプラスミドを準備し、各種プラスミドを、タバコ培養細胞由来のプロトプラストに導入し、GUS及びインターナルコントロールのGFPの発現を解析した。その結果、トマトモザイクウイルスのMPが宿主遺伝子の発現を制御することが示唆された。本研究により、培養細胞だけでなく植物体においても同様の宿主遺伝子の発現調節が行われているかどうかが今後の興味深い課題として提起された。
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