計画初年度の平成15年は、11種のMDV-DNAに由来するプロモーターの内、特に植物体中で強い転写活性を持つC5およびC8について各々欠失を導入したコンストラクトを作製した。現在形質転換タバコにおけるこれら欠失導入体のGUSプロモーター活性の変化を解析中であり、次年度以降にかけて各プロモーター上に存在する既知の植物転写シスエレメントのうちどれが有効に作用しているかを同定する。一方、MDVの宿主は自然条件下ではマメ科植物に限られているが、人為的に接種した場合ナス科やアカザ科植物にも全身感染することが報告されていたが、こうした初期の知見は肉眼による病徴観察に基づいている。そこで本年度、MDVの宿主範囲を再調査した。ナス科のタバコやアカザ科のホウレンソウの他、数種検定植物にMDVの媒介ベクターであるマメアブラムシを用いてウイルス接種を行い、サザンハイブリダイゼーションおよびPCRにより検定した結果、タバコ、ホウレンソウ以外に新たにアブラナ科のArabidopsis thalianaやナデシコ科のコハコベにMDVが全身感染することを確認した。こうした知見は未だ不明な点が多いMDVの生活環(夏期の自然宿主)の解明に非常に有益であるのみならず、今後のプロモーター解析やひいては転写因子の解析を進める上で、タバコの他に、詳細な遺伝情報が得られているArabidopsis thalianaの利用が可能となったという点で大きな成果が得られたと考えられる。
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