研究概要 |
計画2年目となる平成16年は、前年度に引き続き11種のレンゲ萎縮ウイルス(Milk vetch dwarf virus, MDV)のゲノムDNAに由来するプロモーター領域について各々欠失を導入したコンストラクトを作製し形質転換体タバコにおける活性を調査する一方、11種のMDVプロモーターの中で特に植物体中で強い転写活性を持つC8由来のプロモーター領域について、GUSレポーターに連結したコンストラクトを作製し、タバコの他、単子葉植物のイネにアグロバクテリウム法を用いて形質転換し、その転写活性を詳細に調査した。MDVは自然条件下ではマメ科植物などの双子葉植物の維管束(師部)に局在して感染するが、形質転換したイネ植物体においてMDVのC8プロモーターは、遺伝子組み換え植物の作出に広く利用されているカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターと同等に、植物の維管束に限定せずに広い組織において転写活性を持つことが明らかとなり、MDV-C8プロモーターがモデル植物のタバコだけでなくイネなど食用作物の遺伝子組み換えにも実用上利用可能な活性を持つことが示された。また植物を形質転換する際には目的の導入遺伝子のほかに選抜用の抗生物質(カナマイシンなど)抵抗性遺伝子に連結させて植物へ導入し、カルス選抜を行なうが、C8プロモーターを35Sの代わりに選抜マーカー遺伝子に連結させて目的遺伝子を導入すると、より高率に形質転換体を得られることが明らかになった。これはカルスにおいてC8プロモーターが極めて高い活性を持つためであり、MDVプロモーターの実用上高い有用性を持つことが示されたという点で大きな成果が得られたと考えられる。
|