研究課題
レンゲ萎縮ウイルス(MDV)は複数の環状1本鎖DNAからなる分節ゲノムを持ち、ウイルスが持つ種々の遺伝情報は、約1kbのDNAコンポーネント上に個別にコードされている。本研究は、個々のMDV-DNAのプロモーターを解析することによりウイルス感染増殖サイクルにおける転写機構の解明と遺伝子組み換え作物の作出に有用な新規プロモーターの構築を目的とする。最終年度となる今年度は、11個のMDV-DNAコンポーネント(C1-C11)に由来するプロモーターのうち、特に活性が強かったC5とC8のプロモーター領域について、欠失を導入したコンストラクトを構築し、レポーター遺伝子とともにタバコ植物体へ形質転換し、組み替え体におけるプロモーター活性を調査した。その結果、C5(532bp)およびC8(643bp)のプロモーターの上流の領域を除いて約300bpとした場合でも、両者のプロモーター活性が保持されることが判明した。この300bpの領域内にはDofと呼ばれるシスエレメント(AAAG)が複数存在し、またC5およびC8以外のMDVコンポーネントのプロモーター領域にも存在することから、Dofまたはこれに関連した転写因子がMDVゲノムの発現に関与することが強く示唆された。一方、作製したMDV由来プロモーターとGUSレポーター構築物を導入した大腸菌とアグロバクテリウムについて、菌体内におけるプロモーター活性を調査した結果、C1やC11由来のプロモーターがアグロバクテリウム内で強い活性を持つ反面、C5はアグロバクテリウム内でほとんど活性を持たないことが明らかになった。C5プロモーターが持つこの性質は抗菌性タンパク遺伝子を植物体へ組み込む際には有用である。以上、MDV-DNA転写機構と実用化に向けたプロモーターの基本的特性が解明されたという意味で大きな成果が上げられたと考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of General Virology 86
ページ: 1851-1860
Plant Cell Reports 24
ページ: 155-163