1.花卉類に発生するウイルスの検索・同定 (1)モザイク症状を示すアマリリスから分離したウイルスの宿主範囲、物理的性質、外被タンパク質および核酸の性状、血清学的性質を調べた結果、本ウイルスはわが国では未報告のNerine latent virusと同定された。 (2)福島県で採集したリンドウからソラマメウイルトウイルス2、キュウリモザイクウイルス、インゲンマメ黄斑モザイクウイルスを分離し、それらの性質を明らかにした。 (3)昨年度から継続課題であるユリから分離されたアラビスモザイクウイルスの遺伝子解析では、RNA1とRNA2の全塩基配列の解析を終了した。 (4)新ウイルスであるユリウイルスTのTriple gene block領域の塩基配列を解析した。 (5)バラに発生するウイルスの検索を行なった結果、モザイク症状を示すバラからウイルスを分離することができた。なお、バラからのウイルスの分離は日本では最初である。 2.花木類、観賞用樹木に発生するウイルスの検索とdsRNAの解析 木本植物からの核酸の抽出は困難とされたいたが、核酸抽出の妨げになるポリフェノール、多糖類を効率よく除去することにより、優れたdsRNAの抽出法を確立した。本法を用いて、ウイルス病様症状を示すツバキ、サザンカからウイルス由来のdsRNAを抽出し解析した結果、Camellia属植物には様々なウイルスが発生していることが示唆された。 3.アザミウマによるTospovirusの伝播様式の解明 アザミウマによるトマト黄化えそウイルス(TSWV)の伝搬機構を解明するために、各種アザミウマにおけるTSWVの増殖と伝搬能力を調べた結果、非伝搬性のアザミウマにおいは、幼虫期にはウイルスが増殖し蓄積するが、成虫になると濃度が非常に少なくなることを明らかにした。
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