1.花卉植物に発生するウイルスの探索、同定 リンドウからは既報のソラマメウイルトウイルス2などに加えて、リンドウでは未発生と思われるウイルスが分離された。また、アマリリスからはわが国では未発生のNerine latent virus(NeLV)の発生が確認された。 2.植物ウイルスの遺伝子構造の解析 ユリから分離されたアラビスモザイクウイルス(ArMV)のRNA1及びRNA2の全塩基配列を決定し、フキ、スイセンから分離されたArMVとの比較を行った結果、わが国で分離されたArMVの外被タンパク質遺伝子には変異が見られることが明らかになった。 アマリリスから分離されたNeLVのゲノムRNAの12Kタンパク質、外被タンパク質、トリプルジンブロック遺伝子の塩基配列を決定した。NeLVの遺伝子の解析は本研究が最初である。 3.木本植物からの2本鎖(dsRNA)の抽出法の確立 植物ウイルスの約90%はRNAをウイルスゲノムに持つが、これらのRNAウイルスは複製過程で感染植物組織内にdsRNAを生じる。従来、dsRNAの抽出はフェノール、クロロフォルムなどの人体や環境に有害な有機溶媒が用いられてきた。本研究ではこれらの有害な物質を用いないdsRNAの抽出方法を開発した。これらの成果により、抽出が困難な木本植物からのdsRNAの抽出が可能になった。 4.媒介者による植物ウイルスの伝搬機構の解明 植物ウイルスのほとんどは媒介者により伝搬されるため、伝搬機構の解明はウイルス病を制御するために非常に重要である。本研究ではランえそ斑紋ウイルスのオンシツヒメハダニによる伝搬様式を明らかにした。また、近年猛威を振るっているトマト黄化えそウイルス(TSWV)のアザミウマによる伝搬様式を明らかにした。ネギアザミウマ、ダイズウスイロアザミウマなどのTSWVの伝搬効率が悪いアザミウマでは幼虫期には虫体内でウイルスが増殖するが、成虫期にはウイルス濃度が低下したが、伝搬効率が高いミカンキイロアザミウマでは成虫期になってもウイルス濃度の低下は見られなかった
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