イラクサギンウワバの発生がどの程度でどれくらいの規模なのかを明らかにするため、名地試験場や病害虫防除所にアンケート調査を行った。結果では日本全国でキンウワバ類の幼虫による圃場作物への加害があることが分かったが、イラクサギンウワバが発生しているという回答があったところは限られており、本種の発生はまだあまり認識されていないようであった。 主として6月と10月に各地の圃場(主にキャベツ)において採集調査を行い、多くのキンウワバ類幼虫を採集した。6月の調査ではタマナギンウワバが優占種であったが、10月ではイラクサギンウワバが優占種となっていた。アンケート調査ではイラクサギンウワバの発生は見られないという回答を得られた地域でも、圃場調査ではイラクサギンウワバの発生が認められた。 発生しているイラクサギンウワバについて、同じくキャベツに発生するタマナギンウワバとともに薬剤感受性の試験を行った。その結果、いくつかの薬剤がタマナギンウワバに比べてイラクサギンウワバの方が低い感受性を示した。また、採集地域によって感受性が異なる場合もあり、これらの地域差が本当に見られるのかを次年度検討したい。発育零点は10.1度と他のウワバに比べると高かった。各地の地域差が遺伝的にも見られるのかどうかについては、ミトコンドリアDNAの塩基配列比較では大きな置換は見られなかった。これについては今年採集できなかった海外産個体も含めて次年度行う予定である。
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