本研究の目的はわが国におけるコナガとその天敵の発生動態を明らかにするとともに、それらの相互関係を解析し、天敵利用の可能性を探ることである。平成15年度までの研究で次の点が明らかにされた。 (1)西南暖地の平地キャベツ圃場におけるコナガの個体群動態の特徴 夏〜秋、コナガの幼虫や蛹は散発的に見られる程度で、密度は著しく低く、コナガによる被害は皆無であった。秋〜冬作のキャベツでは、11〜1月、幼虫による食害痕が散見されたが、目立った増加は認められなかった。しかし、2月中旬頃から徐々に増えはじめ、3月あるいは4月から幾何級数的に増加し、5月末に発生量はピーク(20〜30/株)に達した。そのあと、6月には個体群は急速に衰退した。 (2)主要な天敵として、幼虫の寄生蜂コマユバチの一種Cotesia plutellae、蛹の寄生蜂の一種Diadromus subtilicornus、及び幼虫を死亡させる糸状菌が認められた。これらの天敵は5月、コナガの大きな死亡要因として作用していることが明らかとなった。コマユバチは幼虫の50〜60%を、糸状菌はコマユバチの寄生を免れた幼虫の40〜70%を、また、ヒメバチは蛹の80〜90%を死亡させた。 (3)夏季のコナガの密度低下の要因として、これまで、1)餌資源の枯渇、2)天敵類の抑圧効果、3)コナガの生理的特性、などが推測されていたが、本研究によってコナガの密度低下は餌資源の枯渇では説明できないことが明らかとなった。現在、2番目の要因と3番目の要因を詳しく調べている。
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