1 カイコ前胸腺抑制ペプチド(PTSP)関連ペプチドの分布および分泌形態を、免疫組織化学によりカイコを含めた数種鱗翅目昆虫間で比較した。鱗翅目昆虫では組織によって合成されるPTSP関連ペプチドの分子種が異なること、脳-側心体に存在する分子種は、カイコとその他の鱗翅目昆虫で異なること、また、epiproctodeal glandからの分泌様式は鱗翅目昆虫でも種によって異なることが示唆された。 2 カイコのコラゾニン受容体遺伝子をクローニングし、定量的RT-PCR法により各組織における発現分布を調べた。コラゾニン受容体遺伝子は脱皮行動篤重要な役割を果たす気門裏、面腺で最も強く、次いで前部絹糸腺、中枢神経系で強く発現していた。これらの結果は、コラゾニンが鱗翅目昆虫では脱皮行動および吐糸行動に作用を及ぼす、という報告と一致していた。また、セイヨウミツバチの脳から[Arg7]-コラゾニンや[His7]-コラゾニンとは異なる第3の分子種のコラゾニンをコードするcDNAをクローニングした。 3 カイコ前胸神経節および脳抽出物から、カイコミオサプレッシン(BMS)およびRFアミドペプチR(カイコFMRFアミド関連ペプチドBRFa)を精製し、KAIKOBLASTを利用してこれらのペプチドをコードするcDNAをクローニングした。特に、BRFaは前胸腺の活性が低い5齢幼虫摂食期に前胸神経節から前胸腺に投射する神経を介して前胸腺に分泌されていることが、直接マススペクトロメトリー分析および神経の活動電位測定の結果から証明された。これは昆虫の前胸腺の神経支配の機構を分子レベルで解明した初の例である。
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