本年度は、環境中でもっとも移動しやすいと考えられる水溶性の腐植物質について、昨年度に開発したポリマー系モノリスカラムを用いて高速逆相液体クロマトグラフィーを行う手法により疎水性/親水性の程度が異なる腐植成分の組成を分析した。水溶性腐植物質は、土壌および堆肥から水抽出した後、酸性にして沈殿する腐植酸画分を得るとともに、上澄についてポリビニルピロリドン樹脂に吸着するフルボ酸画分を得た。さらに、河川水についても同様な方法で腐植酸画分とフルボ酸画分を得た。これらの水溶性腐植物質の分析の結果、土壌および河川水の水溶性の腐植酸画分・フルボ酸画分ともに大部分が親水性成分からなることが認められた。一方、堆肥の水溶性腐植物質の場合には、腐植酸画分には疎水性成分もかなり含まれていたが、フルボ酸画分ではその大部分が親水性成分であった。また、堆肥水抽出物を銅および鉛が集積したリンゴ園土壌に加えて培養すると、銅および鉛の溶出率が高まった。これは、堆肥の水溶性腐植物質が銅および鉛と錯体形成することによって可溶化を促進するためと考えられた。さらに、土壌および腐朽有機物からアルカリ抽出することによって調製した腐植酸について高速逆相クロマトグラフィーを行い、分離する成分を分取して高速サイズ排除クロマトグラフィーによって分子サイズ分布の測定を行うとともに、FT-IRにより化学構造を推定したところ、親水性成分は分子サイズが小さく、芳香族性が強いのに対して、疎水性成分は分子サイズが大きく、脂肪族性が強いことが示された。
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