研究概要 |
本課題の目的は、ほぼ完全に達成され、ここに新しいアルミニウム(Al)抵抗性戦略が提案できた。本課題を採択して頂いた審査委員諸氏の先見の明と、この制度に先ず感謝したい。以下に成果の要点を記す。 (1)新たな根端細胞膜の簡易入手法の開発 根端プロトプラストをポリリシンコートしたガラス板に接着させこれをbuffer洗浄する方法を開発した。この方法は、従来の水性二相分配法よりも簡易迅速である。 (2)脂質組み込みナイロンマイクロカプセルによる透過性実験系の確立 ナイロン-2,8カプセルを合成し、このカプセル膜小孔に脂質二重層を形成させ透過性を調べる系を確立した。これは従来のリポソーム系よりも種々の点で有利である。ライコムギ系統間に有機酸放出量に差がなかった。細胞膜脂質に遊離ステロールとグルコセレブロシドを多く含む脂質膜の透過性は、Alで増大しにくいことが明らかとなった。 (3)根端由来プロトプラストのMB染色性とAl抵抗性 多数の種・品種・系統で、両者に負の有意な相関があった。これは、Al抵抗性植物細胞膜は負荷電性が小さく膜強度が強いことを示す。 (4)ブラシノステロイド(BR)、ジベレリン(GA)突然変異体のAl抵抗性 エンドウの各種BR、GA変異体の中で1hのみがAl抵抗性が明らかに弱かった。この原因は、膜透過性増大によると推定された。多数の植物で、膜透過性増大、Al吸収性増大は、Al抵抗性の初期の主要因であった。有機酸放出は抵抗性に貢献していなかった。 (5)signalgrassの超Al抵抗性 根端細胞膜は著しく不透過性であった。さらに、細胞周辺に高濃度フラボノイドが認められ、これも膜不透過に貢献していると予想された。
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