研究概要 |
アーバスキュラー菌根共生システムにおいて、i)菌根菌から宿主へのリン酸の供給能力を評価する方法を確立する、ii)耐酸性菌根菌のリン酸の供給能を、この方法により解析し、ストレス条件下で高いリン酸供給能力を発揮するメカニズムを明らかにすることを目的に以下の研究を行った。 1.ポリリン酸の定量法確立と菌根菌における合成速度の解析 菌根システムにおけるリン酸供給能の評価法を確立する上で、リンの輸送形態であるポリリン酸の定量法を確立する意義は大きい。これまで、グラム陰性細菌のポリリン酸合成酵素であるポリリン酸キナーゼ(PPK)により、ポリリン酸全量をATPに変換し、ルシフェラーゼ発光分析により定量する方法が提案されている。我々はこのPPK法によるポリリン酸→ATP変換反応の鎖長特異性を調べるために、PPK反応後に残存するポリリン酸の鎖長を最近開発されたon-line hydroxide eluent generator HPLCにより調べた。PPKはリン酸残基20以上であれば、ほぼ全量ATPに変換するが、それ以下の鎖長のものの反応性は極端に低いことがわかった(Ohtomo et al., in press)。PPK法を用いて土壌中の菌根菌菌糸におけるポリリン酸の蓄積パターンと合成速度を測ったところ、土壌にリン酸を施用してからポリリン酸の蓄積量が最大値に達するまでの時間はわずか3時間であり、しかも正味の合成速度は下水処理活性汚泥中で見つかったポリリン酸過剰蓄積細菌のそれに匹敵するものであった(Ezawa et al., 2004)。 2.酸性土壌からの菌根菌の分離・同定とリン酸輸送速度解析のための実験系確立 愛知県内の強酸性土壌から分離されたアーバスキュラー菌根菌をリボソームRNA遺伝子の塩基配列に基づいて同定し、ミヤコグサを用いて耐酸性菌のリン酸輸送能を評価する実験系を確立した。
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