研究課題
基盤研究(C)
耐酸性菌根菌のリン酸の供給能力を評価し、ストレス条件下で高いリン酸供給能力を発揮するメカニズムを明らかにすることを目的に以下の研究を行った。1.菌糸内リン酸輸送速度の解析平成15年度には、菌根システムにおけるリンの輸送形態であるポリリン酸の微量定量法を確立した。平成16年度はこの方法を用いて、愛知県の酸性硫酸塩土壌から分離した耐酸性菌Glomus sp.HR1、鹿児島県桜島由来の耐酸性菌、Archaeospora leptoticha OK-15および東京農工大学の付属農場(中性土壌)より分離されたG.etunicatumの3菌株を用い、pH4.3および7.0の土壌における菌糸内のポリリン酸輸送速度を比較した。低pH条件下では、G.etunicatumは植物に感染できなかったのに対し、耐酸性菌2株は宿主の生長を著しく促進し、土壌中の微量のリン酸を濃縮して植物に供給した。この時、ポリリン酸が菌糸内を移動する速度は、HR1株で1.11mm h^<-1>であったのに対し、OK-15株は0.48mm h^<-1>であり、輸送速度は菌株によって著しく異なっていることがわかった。2.酸性土壌に定着しているパイオニア植物根圏における共生微生物の生態愛知県幡豆町および北海道蘭越町の攪乱跡地に出現した酸性硫酸塩土壌のパイオニア植物に共生しているアーバスキュラー菌根菌の分離に成功した。リボソーム遺伝子の塩基配列を調べたところ、両地点から分離されたGlomus sp.HR1およびRF1株は極めて近縁であったことから、この種は酸性条件への適応力が高いことが示唆された。また、パイオニア植物の根から直接DNAを抽出し、分離によらずに根の中の菌根菌相を調べたところ、植物の生長の良好な地点では菌根菌の種多様性が高く、生育不良な地点では低いことがわかった。
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日本土壌肥料学雑誌 75
ページ: 737-746
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