研究概要 |
イネはヨウ素を過剰吸収すると生育障害を引き起こす。そこで,平成15年度の研究で,イネの選択的なヨウ素吸収を説明する仮説を提案し,この仮説を栽培実験で検証した。さらに平成16年度の研究で,イネのヨウ素吸収に及ぼす環境要因を検討して,仮説の妥当性を確認した。すなわち,イネは根部の酸化力でヨウ化物イオンから分子状ヨウ素を生成し,この分子状ヨウ素を吸収すると推定した。本年度の研究では,イネ培養液中に分子状ヨウ素が生成・存在することを化学的に検証するため,2-ナフタレンチオール(NAP)の蛍光消光を利用した分子状ヨウ素の選択的定量法を検討した。 即ち,試料溶液に酢酸塩緩衝液(pH4.6)を加え,NAP-クロロホルム溶液を加え振り混ぜる。この操作で,試料溶液に分子状ヨウ素が含まれるとクロロホルム相の蛍光が減少(消光)する。そこで,分取したクロロホルム相の蛍光強度を励起波長280nm,蛍光波長350nmで測定して,試料とブランク溶液の蛍光強度の差(消光量)から分子状ヨウ素を定量した。 この方法を,銅イオン共存のイネ培養液に応用して分子状ヨウ素の生成存在すること,また,この培養液で栽培するとイネのヨウ素吸収量が増加することを確認して,仮説を間接的に証明した。
|